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産業医とスポット契約は成立するか——単発で頼める範囲と、常時50人以上が抜けられない理由

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この記事の結論

産業医との単発(スポット)契約は、面接指導や意見書の作成のような単発で完結する業務には使える。ただし常時50人以上の労働者を使用する事業場は、労働安全衛生法第13条第1項により産業医の「選任」そのものが義務であり、規則が求める毎月の職場巡視をスポット契約だけで満たすことはできない。

誰向けか: 産業医と契約せず、必要なときだけスポットで呼べないか検討している総務・人事の担当者。とくに常時50人以上の事業場で、まだ産業医を選任していない場合。

  1. 自社が常時50人以上の事業場か(労働安全衛生法施行令第5条の基準に該当するか)。該当すれば選任義務があり、スポットだけでは代替できない
  2. 公表されているスポットの実額は19社中4社のみで、1回15,000円〜30,000円台まで幅がある
  3. 50人未満で選任義務がない事業場は、スポットだけで運用する選択も条文上は成り立つ

産業医と契約せず、必要なときだけスポットで呼べないか——このところ、こういう相談が増えているらしい。結論から言えば、面接指導や意見書の作成のような単発で完結する業務なら、スポットで足りる。ただし常時50人以上の事業場には産業医を選任する義務そのものがあり、規則が求める毎月の職場巡視は、スポット契約だけでは満たせない。どちらに当たるかで、答えは変わる。

産業医のスポット契約とは、何を指すのか

「スポット」は法令上の用語ではない。各社がサービスに付けている呼び名で、指している中身はどこも同じである。月額の継続契約を結ばず、面接指導1回・意見書作成1件といった単発の業務だけを、案件が出るたびに依頼する形を指す。長時間労働者が出た月だけ、休職者の復職判定が必要になったときだけ、といった不定期の需要に向く。

嘱託契約

月額を払い、毎月または隔月の訪問・面談を継続的に受ける。産業医の「選任」に当たる。

スポット契約

案件が発生したときだけ、1回単位で依頼する。継続的な選任ではない。

スポットの相場は? 実額を出しているのは19社中4社

当サイトが掲載する産業医紹介サービス19社のうち、料金を何らか公表しているのは10社である。そのうち、スポット(単発)の実額まで公式サイトに載せているのは、次の4社にとどまる(2026-08-28取得)。

  • OZ 産業医紹介サービス スポット業務プラン 15,000円/15分
  • エムスリーキャリア 産業医サービス スポット産業医 15,000円/1案件(オンライン30分)、32,000円〜(訪問60分・税抜・地域区分により変動)
  • アセッサ産業医パートナーズ スポット面談(WEB) 20,000円/1人1回
  • 産業医コンシェルジュ スポットプラン 30,000円〜/1回(人数規模を問わず単発)

4社

19社のうち、スポットの実額を出しているのはこの4社だけである。残る15社は、月額契約の料金すら非公表のところを含め、単発の値段を示していない。「相場」と呼ぶには少なすぎる母数なので、この4件を安い・高いで評価するのではなく、実額そのものとして扱うのが正確な使い方になる。

スポットで頼めること、頼めないこと

4社の記載を見るかぎり、スポットが引き受けるのは面談・意見書作成のように、一回で始まって一回で終わる業務である。長時間労働者への面接指導、休職・復職の判定、ストレスチェックの高ストレス者面談——単位が「1件」で数えられる業務は、スポットの守備範囲に入る。

入らないのは、継続していることが前提の業務である。次の職場巡視が、その代表になる。

常時50人以上の事業場が、スポットだけで済ませられない理由

労働安全衛生規則第15条第1項は、産業医の職場巡視についてこう定めている。

「産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し……」

「毎月一回」を満たすには、その月の巡視を引き受けた産業医が、来月も再来月も同じ立場で在籍していなければならない。都度ごとに相手が変わってもよいスポットの形では、この継続を前提にした義務を満たせない。

そもそも、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医を選任する義務そのものがある。労働安全衛生法第13条第1項は「事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに…産業医を選任」すると定め、その規模は労働安全衛生法施行令第5条で常時50人以上と決まっている。

選任とスポットの違い

選任は、事業者が特定の医師を届出のうえ継続的に置いている状態を指す。スポットは案件ごとの単発依頼であり、選任には当たらない。常時50人以上の事業場がスポットだけで運用していると、選任義務そのものを満たしていないことになる。

50人未満なら、スポットだけで運用する選択も成り立つ

選任義務が生じるのは常時50人以上の事業場である。50人未満であれば、この義務自体が存在しないため、必要なときだけスポットで面談を依頼する運用は条文の上でも無理がない。19社のうち、50人未満向けのプランを公式サイトに明記しているのは4社である(2026-08-28取得)。産業医の費用相場には、月額契約とスポットの両方の実額をまとめてある。

契約前に確認する3つ

  1. 自社が常時50人以上か。 該当すれば、スポットだけでは選任義務を満たせない
  2. スポットで依頼したい業務が、単発で完結する種類か。 職場巡視のように継続を前提とする業務は対象外になる
  3. 選任が必要なら、選任の手順を先に確認する。 選任には14日以内という期限があり、スポットで様子を見ている間に過ぎてしまうことがある

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