産業医の選任 完全手順
14日以内の選任と、労働基準監督署への届出まで
従業員が常時50人以上の事業場には、産業医の選任義務があります。期限は義務が発生してから14日以内(労働安全衛生規則13条)。このページでは、要否の数え方から届出、変更時の手続きまでを順番に整理します。条文はすべて e-Gov 法令検索の原文と照合しました(2026年9月6日取得。施行日は出典欄に記載)。
手順は7つ
事業場ごとに、常時使用する労働者を数える
会社単位ではなく事業場(支店・工場・店舗)単位で数えます。常時50人以上なら産業医の選任義務があります(労働安全衛生法13条1項、労働安全衛生法施行令5条「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」)。パート・アルバイトも、常時使用していれば含みます。
専属が要るかを確かめる
常時1,000人以上の事業場、または規則が列挙する有害業務(深夜業を含む業務、重量物の取扱い等重激な業務、著しい騒音、坑内 ほか)に常時500人以上を従事させる事業場は、その事業場に専属の産業医が必要です(安衛則13条1項3号)。常時3,000人を超える事業場は2人以上(同項4号)。
選べない人を外す
法人の代表者、事業を営む個人、事業場でその事業の実施を統括管理する者は、産業医に選任できません(安衛則13条1項2号)。役員が医師であっても、この立場に当たれば選任できません。
産業医を探す
探し方は主に3つ。地域の医師会に紹介を頼む、健診機関に相談する、産業医紹介サービスを使う。それぞれの違いは当サイトのランキングと各社ページで比べられます。
14日以内に選任する
選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません(安衛則13条1項1号)。「14日以内に届出」ではなく「14日以内に選任」です。届出の期限は別に「遅滞なく」と定められています。
所轄労働基準監督署長に報告する
選任したら遅滞なく、電子情報処理組織を使用して報告します(安衛則13条2項)。条文は提出する様式ではなく、報告する事項を8つ列挙しています(下の表)。
毎月の稼働を始める
原則として月1回(条件を満たせば2か月に1回)の職場巡視、衛生委員会への出席、健康診断結果のチェック、長時間労働者・高ストレス者の面接指導が主な業務です。
報告する事項は11個(様式名では定められていない)
安衛則13条2項は、提出する様式ではなく報告すべき事項を列挙しています。1号は同規則2条2項の引用なので、その中身を展開して並べました。
- 労働保険番号(安衛則2条2項1号)
- 事業の種類、事業場の名称・所在地・電話番号(同2号)
- 常時使用する労働者の数(同3号)
- 報告年月日及び事業者の職氏名(同8号)
- 有害業務(13条1項3号の業務)に常時従事する労働者の数
- 産業医の氏名、生年月日及び選任年月日
- 産業医が要件のいずれに該当するかの別と、医籍の登録番号
- 産業医の専門科名
- 専属であるか否かの別、他の事業場に勤務している場合はその事業場の名称
- 前任者がいる場合はその氏名と、辞任・解任・退任の年月日
- 初めて産業医を選任した場合はその旨
あわせて、産業医の要件(安衛則14条2項各号)を満たすことを証明できる電磁的記録などを添えることとされています。
探し方で最も時間が変わるのは4番です。医師会経由は費用を抑えられる場合がありますが、紹介までの日数や候補の数は地域差があります。紹介サービスは最短稼働日数を強みにする会社が多い一方、料金は非公表が大半です。当サイトは19社を内容スコア順に並べ、「最短でいつから稼働できるか」を各社に直接確認する取り組みを進めています。
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よくある質問
産業医の選任は、いつまでに何をすればよいですか?
2つの期限が別々に定められています。①選任は「選任すべき事由が発生した日から14日以内」(安衛則13条1項1号)。②所轄労働基準監督署長への報告は「遅滞なく」(同条2項)。14日は選任の期限であって、届出の期限ではありません。
届出は紙の様式で出すのですか?
条文は「遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を(中略)所轄労働基準監督署長に報告しなければならない」と定めています(安衛則13条2項・2026年8月1日施行時点)。様式名ではなく、報告すべき事項が列挙されている形です。なお、紙での提出が実務上どこまで受け付けられるかは、当サイトでは確認できていません。所轄の労働基準監督署にご確認ください。
産業医を変更したら、届出は必要ですか?
必要です。後任について選任時と同じ報告を行います。あわせて、辞任・解任があったときは遅滞なくその旨と理由を衛生委員会または安全衛生委員会に報告し(安衛則13条4項)、辞任等があった旨も所轄労働基準監督署長に報告します(同条5項)。ただし後任者の選任報告で前任者の氏名と辞任等の年月日を報告すれば、これに代えられます(同項ただし書)。
社長が医師です。産業医にできますか?
できません。事業者が法人の場合の代表者、法人でない場合の事業を営む個人、事業場でその事業の実施を統括管理する者は、産業医に選任できないと定められています(安衛則13条1項2号)。
選任しない場合の罰則はありますか?
あります。労働安全衛生法13条1項に違反した場合、50万円以下の罰金の対象です(同法120条1号)。
専属の産業医が必要なのはどんな事業場ですか?
常時1,000人以上の労働者を使用する事業場と、安衛則13条1項3号が列挙する有害業務に常時500人以上を従事させる事業場です。列挙されている業務には、多量の高熱物体を取り扱う業務、著しい騒音を発する場所における業務、坑内における業務、深夜業を含む業務、重量物の取扱い等重激な業務などが含まれます。「深夜業を含む業務」が入っている点は見落とされやすいところです。
50人未満でも産業医は必要ですか?
選任義務はありません(施行令5条)。ただし労働者の健康管理の努力義務はあり、地域産業保健センター(無料)や50人未満向けプランのある産業医サービスが受け皿になります。ストレスチェックの実施義務が50人未満にも広がることは決まっており(施行日は未定・遅くとも2028年5月13日まで)、その体制づくりと合わせて検討すると二度手間になりません。
出典: 労働安全衛生法13条1項・120条1号(施行日 2026年4月1日)、 労働安全衛生法施行令5条(施行日 2026年4月1日)、 労働安全衛生規則13条(施行日 2026年8月1日)。 いずれも e-Gov 法令検索から 2026年9月6日に取得し、条文を照合しました。 条番号・号番号は原文のとおりです。個別の適用判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。