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産業医が辞めたときの届出が、2026年8月1日から義務になった

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この記事の結論

常時50人以上の事業場では、産業医の辞任・解任・退任があったとき、遅滞なく所轄労働基準監督署長へ電子申請で報告する義務が令和8年8月1日から生じた(労働安全衛生規則第13条第5項)。ただし後任の選任報告を同時に出す場合は、辞任等の報告は要らない。

誰向けか: 産業医との契約が今年度で切れる、あるいは産業医から辞意を伝えられた、常時50人以上の事業場の総務・人事の担当者。

  1. 後任を決めてから同時に報告すれば辞任等の報告そのものが不要になる(規則第13条第5項ただし書き)ため、先に後任を探す順番のほうが手数が少ない
  2. 辞任等があった日から14日以内に新しい産業医を選任する義務は、報告義務とは別に元からある(規則第13条第1項第1号)
  3. 辞任・解任のときは、その理由を遅滞なく衛生委員会または安全衛生委員会に報告する義務がある(規則第13条第4項)

産業医から「今年度で辞めます」と言われたとき、事業者が動かなければならない期限は3つある。そのうち1つは、2026年8月1日に増えたばかりのものだ。増えたことを知らせる通知が来るわけではないので、契約更新の時期に気づかないまま過ぎることがある。

8月1日に何が変わったのか

これまで所轄の労働基準監督署長に報告する義務があったのは、産業医を選んだときだけだった。令和8年8月1日から、辞めたときにも報告が要る。

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が2026年4月に出したリーフレットは、こう書いている。

労働者数50人以上の事業場では、産業医を選任したとき、または産業医の辞任等があったときは、遅滞なく、電子申請により、所轄労働基準監督署長に報告する必要があります。

「辞任等」の中身も同じリーフレットが定義している。「産業医の辞任、解任または退任を指します」。自分から辞める場合も、事業者側から解く場合も、任期が満ちて退く場合も、すべて含まれる。

根拠の条文

労働安全衛生規則第13条第5項。「事業者は、法第十三条第一項の規定により選任した産業医の辞任等があつたときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない」

報告しなくてよい場合が、条文の中に用意されている

同じ第5項には、ただし書きが付いている。

ただし、当該報告は、後任者の選任に係る第二項の規定による同項第一号及び第七号に掲げる事項の報告をもつて、これに代えることができる。

第2項第7号は「前任者がいる場合はその氏名及び辞任、解任又は退任……の年月日」である。つまり、新しい産業医の選任報告に前任者の名前と辞めた日を書けば、辞任等の報告は別に出さなくてよい。リーフレットも同じことを平易に書いている。「新たな産業医の選任と前任の辞任等を同時に報告いただいた場合は、辞任等の報告は不要です」。

先に後任を決める

選任報告を1回出すだけで済む。前任者の氏名と辞任日を同じ報告に書く。

先に辞任だけ届け出る

辞任等の報告を1回、あとで選任報告をもう1回。届出が2回になる。

手数が変わるだけで、どちらも違反ではない。ただし後述の14日という期限があるので、実務としては後任を先に決める順番のほうが無理がない。

もう1つ、報告義務が生じない場合がある。リーフレットの注記による。「労働者数が50人未満になった場合の産業医の辞任等の場合は、報告義務はありませんが、選任状況の適切な把握の観点から監督署への報告をお願いします」。義務ではないが求められている、という書き方である。

元からある期限のほうが短い

14日

労働安全衛生規則第13条第1項第1号は「産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること」と定める。産業医が辞めた日が、この「事由が発生した日」に当たる。リーフレットも「選任していた産業医の辞任等があったときは、当該日から14日以内に新たに産業医を選任する必要があります」と書いている。

報告の期限は「遅滞なく」で、日数の指定がない。一方、後任を選ぶほうには14日という数字がある。新しく増えた報告義務より、元からあるこちらのほうが先に来る。

そして3つ目。規則第13条第4項は「事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない」と定める。理由まで社内の会議体に出す必要がある。この項には退任が入っていないので、任期満了で退いた場合は対象外になる。

届出の出し方

電子申請が原則である。労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請は令和7年1月1日から義務化されており、産業医選任報告もその対象に入っている。ただし東京労働局のページは「パソコン端末を所持していない等の事情により電子申請が困難な場合には、当分の間、書面による報告も可能です」と書いている。

申請の入口は2つある。e-Gov電子申請と、「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」である。後者は入力した内容から帳票を作る仕組みで、電子申請にもそのまま進める。

交代のことを書いている紹介サービスは、19社中2社だった

当サイトが掲載している産業医紹介サービス19社の公式サイトを読み、料金・サービス内容・会社情報の記載の中に、産業医の交代・引き継ぎ・後任の手配に触れた記述があるかを数えた。触れていたのは2社である(産業医コンシェルジュ、ワーカーズドクターズ。2026-08-26および08-28取得)。

残る17社が交代に対応しないという意味ではない。公式サイトの掲示に出ていない、という事実だけである。ただし、選任の入口を案内する記述はどの社にも並んでいるのに、辞めたあとの話はほとんど書かれていない。8月1日に増えた義務が辞めたときのものであることを踏まえると、この非対称は問い合わせのときに確かめる価値がある。

常時50人未満の事業場にも対応すると明記しているのは19社中4社だった(同日取得)。人数が50人を割ったときの扱いは前述のとおり報告義務から外れるが、産業医との関係そのものをどうするかは別の話になる。

契約更新の前に確かめる3つ

産業医との契約が年度で切れる事業場は、切れる前にこの順番で見ておくと届出が1回で済む。

  1. 後任のあてがあるか。 なければ、辞任等の報告と選任報告の2回に分かれる
  2. 辞める日から14日以内に選任できるか。 報告より先に来る期限はこちらである
  3. 辞任・解任のときは、理由を衛生委員会に出す準備があるか。 退任のときは要らない

産業医の選任手順には、選任そのものの流れをまとめている。

出典