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月80時間を超えた人から申し出があったら、会社は何日以内に何をするのか

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この記事の結論

会社が日数で区切られた期限を持つのは、時間外・休日労働の超過時間を算定する頻度(毎月1回以上、一定の期日)だけである。80時間超の通知は「速やかに」、申出後の面接指導実施と医師の意見聴取は「遅滞なく」で、いずれも条文上は具体的な日数の定めがない(労働安全衛生法第66条の8、労働安全衛生規則第52条の2・第52条の3・第52条の7)。面接指導そのものは、労働者本人の申出があって初めて動く。

誰向けか: 長時間労働者が出たときに、何をいつまでにやればいいのかを条文で確かめたい総務・人事の担当者。

  1. 超過時間の算定は毎月1回以上、一定の期日を定めて行う会社の義務。ここだけは頻度が条文に数字で書かれている
  2. 80時間超の通知(速やかに)は会社の義務だが、そのあとの申出は労働者本人に委ねられており、会社から強制はできない
  3. 申出のあとの面接指導実施と医師の意見聴取は、どちらも「遅滞なく」であって、日数の上限は条文に定められていない

長時間労働者が出た。総務が最初に探すのは、期限である。産業医の選任手順を先に調べていれば、「事由が発生した日から十四日以内」という数字を目にしているはずだ。同じような数字が、面接指導にもあるに違いない——そう当たりをつけて、労働安全衛生法を開く。

ない。少なくとも、日数で区切った期限は一つも出てこない。あるのは「速やかに」「遅滞なく」という、期限のようで期限ではない言葉が、条文のあちこちに置かれている光景である。

会社が数字を持つのは、算定の頻度だけ

面接指導の対象になるかどうかは、時間の数え方で決まる。労働安全衛生規則第52条の2第1項は、対象者をこう定めている。

「休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者」

80時間

超えた時間をいつ数えるかは、会社任せではない。同条第2項が「前項の超えた時間の算定は、毎月一回以上、一定の期日を定めて行わなければならない」と定めている。毎月1回という頻度は、条文が唯一はっきり数字で書いている部分である。

「速やかに」に、日数は書かれていない

80時間を超えた労働者が出たら、会社は次に何をするか。同条第3項が答えを持っている。

「事業者は、第一項の超えた時間の算定を行つたときは、速やかに、同項の超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者に対し、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を通知しなければならない」

通知の義務は会社にある。ただし「速やかに」であって、「3日以内に」でも「翌週末までに」でもない。

「速やかに」の中身

労働安全衛生法・規則には、「速やかに」「遅滞なく」を具体的な日数に換算する規定が見当たらない。目安を示す通達の存在は当方では確認できていないため、ここでは「日数の定めがない」という事実だけを扱う。

申出は、会社の義務ではない

通知を受け取った労働者が、実際に面接指導を受けるかどうかは、また別の話になる。労働安全衛生規則第52条の3第1項は「法第六十六条の八の面接指導は、前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする」と定める。申出がなければ、面接指導そのものが始まらない。

会社の義務

時間の算定(毎月1回以上)、80時間超の通知(速やかに)、申出後の面接指導実施と医師の意見聴取(遅滞なく)。

労働者の申出待ち

面接指導を受けるかどうかは本人の申出次第。会社は強制できない。

会社ができるのは、勧めることまでである。同条第4項は「産業医は、前条第一項の要件に該当する労働者に対して、第一項の申出を行うよう勧奨することができる」と定めている。「できる」であって、「しなければならない」ではない。同じ申出制の面接は、ストレスチェックの高ストレス者面接にもある(ストレスチェック義務化はいつから)。あちらも、会社から強制はできない構造だ。

申出のあとは、「遅滞なく」が二度続く

申出があってからは、動きが速くなる。同条第3項は「事業者は、労働者から第一項の申出があつたときは、遅滞なく、法第六十六条の八の面接指導を行わなければならない」と定める。実施したら終わりではない。労働安全衛生規則第52条の7は、面接指導が行われた後「遅滞なく」医師から意見を聴くよう求めている。

遅滞なくが二度続く。ただし、どちらも日数の上限は書かれていない。速さの基準は、条文の言葉ではなく、実際にどれだけ早く医師の予定を押さえられるかという、会社の側の実務力に委ねられている。

医師の意見を聴いたら、働き方を変える番になる

面接指導と意見聴取の先には、もう一段ある。労働安全衛生法第66条の8第5項は、こう定めている。

「事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。」

面接して終わり、意見を聴いて終わり、ではない。就業場所を変える、作業を転換する、労働時間を短くする、深夜業を減らす——医師が必要だと言えば、会社はそのどれかを実際に講じる。面接指導の結果の記録は、労働安全衛生規則第52条の6により5年間の保存が義務づけられている。

オンラインで受けられるかは、社によって分かれる

「遅滞なく」実施するには、面接そのものをどれだけ早く組めるかが効いてくる。訪問だけの契約だと、産業医のスケジュールと訪問日が合うまで待つことになる。当サイトが掲載する産業医紹介サービス19社の公式サイトを見ると、オンラインでの面接に対応すると明記しているのは9社、記載がないのは10社だった(2026-09-03取得)。記載がない10社が対応しないと決まったわけではなく、公式サイトに書かれていなかった、というだけである。ただ、申出から実施までの間に日数の定めがない以上、対応の速さは契約している産業医紹介サービスの側の体制で決まる部分が大きい。

期限の代わりに、条文が渡しているもの

会社が数字で区切られた期限を持つのは、超過時間の算定——毎月1回以上、一定の期日を定める、その一点だけである。通知は速やかに、実施は遅滞なく、意見聴取も遅滞なく。「十四日以内」のような数字は、面接指導の条文のどこにも出てこない。総務が期限を欲しがる場面で、法が渡したのは日数ではなく、算定のリズムと二つの「遅滞なく」だった。それで足りているかどうかは、遅れが実際に労働者の不利益に変わった場面で、初めて問われることになる。

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